INTERVIEW
ADKとスコラ・コンサルトがコラボレートした理由
ダーザインブランディングの“存在意義”とは
両社共通だった「本質的な価値を提供したい」との思い
ADKとスコラ・コンサルトが出会ったきっかけを教えてください。
古村:あるコンペに2社で組んで参加したのがきっかけです。そのコンペには負けてしまったのですが、その後の飲み会で初めて辰巳さんとお会いしました。そのとき、なぜか通じ合える感じがして、話が盛り上がったことを覚えています。
辰巳:思えば、あれからもう2年が経ったのですね。あのときは、コンペに参加した弊社のメンバーから「ADKさん、すごくいいんですよ」と聞いていたので、お会いするのが楽しみでした。実際にお話をしたら、古村さんの熱い思いが伝わってきたのが印象的でした。
古村:つい熱くなってしまったのは、うれしかったからです。実は、スコラ・コンサルトさんが組織風土の変革をサポートしている会社だということを不勉強で知らなかったのですよ。「そんなこと(組織風土を変革すること)が可能なんだ」と衝撃を受けるのと同時に、僕が求めていたものに出会えたという喜びがありました。
というのは、広告会社の仕事は意外と会社の中まで入り込めないのです。接するのは広報や宣伝、企画といった対外的な業務をしている部署が中心なので、フィードバックを受けても、本当にその会社の現場の方々のためになっているのか正直わかりません。ブランディングをしても、会社自体が変わらない結果になることもあり、もっと中まで入って本質的な価値を提供できないものかというもどかしさを感じていました。
辰巳:ADKさんがそういう意識を持っていることを知ったのは、僕にとって驚きでした。失礼な言い方かもしれませんが、広告のクリエイティブには「どう見せるか」のみを重視している刹那的なイメージがありましたので。
スコラ・コンサルトはまったく逆で、ひとつひとつの施策に対して「それにどんな意味があるのか」「働いている人にとって、社会にとってどんな意味を持つのか」と問い続けることが立脚点ですから、広告会社とはベクトルが異なるのかなと勝手に思っていたのです。古村さんと膝を突き合わせて話したことで、それが誤解だったことがわかりました(笑)。
「差異化」のみにこだわると「同質化」する
お互いに「大切にしたい部分」が一致したのが、両社の共同事業であるダーザインブランディングの出発点になったわけですが、なぜダーザイン=“存在価値”をブランディングしようと考えたのでしょうか。
古村:広告会社は、時としてクライアントの無茶な要望に応えてしまうことがあります。アイデアや工夫を凝らして何とかするわけで、そこがこの仕事の醍醐味でもありますが、裏を返せば無茶な要望を許しているということです。企業の社会的責任やコンプライアンスが問われている今、そろそろこの構造を考え直すべきではないかと思うようになってきました。ただ要望を受け入れることよりも、言うべきことを言うなり、疑問を呈すなりしたほうが、結果としてクライアントのためになる時代になってきたと思うのです。
辰巳:無茶な要望は、広告会社だけに限った話ではなく、どんな会社でも起こることですよね。なぜ無茶なことになってしまうのか。それは、その会社が持つべき軸からずれた方向へ進んでいるからです。サッカーでたとえれば、守備重視のチームコンセプトなのに、ディフェンスを強化せず得点力のあるフォワードの選手を獲得するようなものです。会社も同じで、本来の軸からずれたところでいかに優れた戦略を構築しても、十分に活かすことはできないでしょう。だから、本来の軸は何なのかダーザイン=“存在意義”を問い直すところから始めるべきなのです。
古村:実際、“存在意義”を見失っている会社さんは非常に多いと感じています。その原因は、激化する競争です。競争に勝つことはもちろん重要ですが、短期的なスパンで横(競合)を気にしすぎると、どんどん方針がぶれてしまうのですよね。「競合がこの分野に進出したからウチもやろう」「この分野には競合がいないからやるべき」と競争や差異化ばかりを気にすると、本来の良さを見失ってしまいます。
辰巳:本来の良さを見失ってしまうのは、差異化しようとすればするほど同質化するからです。ブルー・オーシャンへの参入が殺到することが象徴的です。同質化してしまうのは、古村さんがおっしゃったように「違い」を起点として議論を始めることにあります。そうすると、どこまでいっても「違い」が判断基準になり、オリジナリティは生まれにくい。
では、オリジナリティはどこにあるかといえば、「自分たちは何か」というDNAやアイデンティティにしかないわけです。そこを突き詰めて導き出したダーザイン=“存在意義”は誰も真似できません。それをブランド化するのがダーザインブランディングです。ADKさんと組むことで、めまぐるしい変化に翻弄される今の時代だからこそ求められるサービスが実現できると確信しました。
それぞれの強みを活かし、相互の不足を補い合う関係
スコラ・コンサルトは、組織風土変革のコンサルティングを30年以上手がけていますが、これまでそういうブランディングサービスはしていなかったのですか?
辰巳:実はそうなのです。ブランドの構築は絶対に必要だと僕らは信じていますが、それ自体はサービスにしてきませんでした。なぜならば、ブランドは社内外に発信しなければならないからです。そのためにはシンボリックな言葉や「形」にする必要がありますが、スコラ・コンサルトにはクリエイティブのリソースがありませんでした。
もちろん、言葉や形にしたり、外へ発信したりといったこともしていますが、強みといえるレベルではありません。ADKさんのような一流のプロフェッショナルと組むことで、お客様企業とともに問い直して見つけ出した“存在意義”をブランドという形に変え、世の中に打ち出していくことが実現できるのではないかと思いました。
古村:逆にADKは、スコラ・コンサルトさんのように会社の中まで入り込んで動かしていくノウハウがありませんので、両社が一緒に取り組むことで補い合える関係になれるのではないかと考えました。僕らは外に対する「形」をつくることが強みですが、スコラ・コンサルトさんの内に入り込んでいく力と融合することで、より本質的なブランディングサービスができます。
社員・会社・社会が「意味」でつながる利点
ブランドという概念は、一般的に広い意味を持つように思います。ダーザインブランディングは、ブランドをどのようなものと規定しますか?
古村:仕事柄、ブランドについていろいろ勉強をしてきましたが、ブランドに関する定義を一通り見ていくと、これまではほとんどが競争に勝つことが重要な目的でした。だから必然的に差異化を重視したものが多かったのですが、ダーザインブランディングが構築するブランドは、それらとは一線を画したものです。
辰巳:ブランドの構築によって他社との違いをつくるのではなく、“存在意義”を問い直した結果、「自分たちはこうありたい」と感じたものをブランドにしていくのがダーザインブランディングです。重要な視点としては、「社員」「会社」「社会」の3つをつなげる軸とならなければならないと思っています。
古村:一般的なブランドは、差異化を意識するあまり、「会社」にとってのみ意味がありました。でも、「会社」は「社会」の中にあるものですし、「社員」がいなければ存在しません。この3つに対しての意味がつながらないと組織力は上がりませんし、当然競争にも勝てません。
辰巳:もうひとつ重要なのは、ブランドは構築して終わりではないということです。「形」としてのロゴをつくったところで、社員がそれを体現していなかったら意味がありません。「ホスピタリティが充実している」と謳っても、顧客への接遇が悪ければマイナス効果です。
今までのブランドは、構築してから現場へ展開することが大半だったので、そうしたミスマッチが起こりがちでした。
古村:「こういうブランドに決まったから」とできあがったものを現場に下ろしていくやり方で社内に浸透させるのは実はすごく難易度が高いです。現場でのブランドの理解度や共感度にどうしても差が出ますから。
辰巳:だからこそ、「社員」「会社」「社会」の3つが意味でつながらなければならないと思っています。働いている社員にとっての意味、会社にとっての意味、社会にとっての意味が感じられるブランドにしていくことで、社員にとっては働きがいがあり豊かになれる会社となり、会社は社会にとって価値を発揮できるようになります。
そのときに、全員に伝わる言葉やビジュアルなど、そこに立ち戻ることで確認できる「形」があるとないとでは大違いなのです。そこにADKさんの強みを活かせることが、ダーザインブランディングの大きな特長です。
一気通貫で一緒に「参加」しなければ成立しない
ダーザインブランディングのサービス提供は、どのように行われるのですか。
辰巳:通常のブランディングならば、経営層や経営企画といった限られた部署の人たちから「何がしたいのか」「どう見せたいのか」といったことをヒアリングしていきます。しかし、ダーザインブランディングは“存在意義”を問い直すことから始めますので、経営層はもちろん現場の社員まで含めて「なぜこの会社が存在しているのか」と問いかけていきます。
古村:ADKに限らず広告会社はどこもそうだと思いますが、クライアントとミーティングをしたらいったん持ち帰り、何案か作成して次のミーティングに持参するのがこれまでの仕事のしかたでした。しかし、ダーザインブランディングは例えるならオープンキッチンのような感覚です。その場でフィードバックをもらい、その場で提案する。言葉だけでなく、アートディレクター出身のクリエイティブディレクターもチームのメンバーにいるので、そこで出てきたイメージをその場でビジュアル化することもやります。インタラクティブなライブといった感じでしょうか。
辰巳:お客様企業との関係が、サービスを提供する側と提供される側になってしまったらアウトだと思っています。「一緒につくる」というのが、ダーザインブランディングの大前提。ADKさんの提案は、ブランドのイメージを固めるためのものであって、ソフトウェアでいえばアジャイル開発のようにお客様企業を含めて全員を巻き込み、理解を深めながら進めていきます。僕らから「こうしてください」とお願いするのではなく、一緒に寄り添いながらブランドを構築するサービスだということはお伝えしたいですね。
古村:お客様にも一気通貫で一緒に取り組むことにコミットしていただかないと成立しないサービスなのですよね。たとえば経営トップが「じゃあおまかせする」という反応では、僕らもサービスの提供ができません。「大切なことだから一緒に取り組もう」と思っていただくことが、実はこのサービスのキーポイントです。
辰巳:ブランドの構築は非常にエネルギーを要しますので、ある種の覚悟を持っていただく必要があるのは確かです。社員の意識変革だけでなく、結果として今まで大切にしてきたサービス・事業の変更を余儀なくされる可能性もありますから。しかし、予測不能とされるこれからの時代、生き残るのは社員・社会としっかり結びつけた“存在意義”を持っている会社であるはずです。末永く輝く会社であるために必要なプロセスだと理解いただきたいと思います。
業績アップと新たな事業モデル実現を後押しした事例
ダーザインブランディングのサービスを受けることで、どのような効果が期待できますか。
古村:おそらく今までにないサービスだと思いますので、その効果を説明するのは難しいと思っていました。そこで、まず事例をつくりましょうということになったのです。わりと早いタイミングでダーザインブランディングのサービス内容は固まっていたのですが、正式にローンチするのに時間がかかったのはそれが理由です。
辰巳:最初にダーザインブランディングのお手伝いをしたのは、大阪の在宅医療専門のクリニックさんです。通常、クリニックを経営する際は、どうやって患者さんを集めればいいのか、どのくらいの数を集めればやっていけるのかといったことから考えるものです。しかし、ダーザインブランディングですから、「何をしたいのか」というところから一緒に話し合いました。
古村:院長先生は総合病院に勤務されていたのですが、「最期は自宅で迎えたい」というがん患者さんが多いことから、がんの在宅医療に特化したクリニックを開業したいとの希望をお持ちでした。がん患者さんの終末期ケアは、急速な容態変化が予想されるため、現場に赴く看護師さんの役割が非常に重要です。
辰巳:しかし、医療、特にクリニックの世界ではドクターが最上位というヒエラルキーがあり、看護師さんは何も意見できないのが一般的です。院長先生は看護師さんが主体的に判断して患者さんの急変時に「先生、こうするべきです」とすぐ連絡ができる体制づくりを望んでいましたが、「ドクターには意見が言えない」という認識を持つ看護師さんが集まってしまうとそれが難しくなります。そこで、「看護師を主体としたフラットなチームによる在宅緩和ケア」というコンセプトを明確にし、それをもとにウェブサイトを制作しました。
古村:普通、クリニックのウェブサイトの「ご挨拶」は院長先生が先頭に載っています。しかし、「看護師主体」を打ち出すため看護師さんをあえて先頭にしました。“存在意義”を明らかにして、それを「形」として発信したわけです。医療業界では波紋を呼んだようですが、社会のニーズにはしっかり合致し、今では人手が足りなくなるほど患者さんが増えています。先日はテレビのニュース特集で大きく取り上げられましたし、このコンセプトに共感するドクターが集まって新たなネットワークをつくる準備も始めています。結果として、このクリニックさんは医療界に新たな潮流を起こしつつあるのです。
辰巳:うれしかったのは、院長先生が「ダーザインブランディングをしたおかげで、自分が何をしたかったのか再確認できる」とおっしゃってくれたことです。どんな仕事でもそうですが、忙しい日常業務に没頭すると目先のことに左右されがちですよね。ダーザインブランディングをすることで、そうならないための軸が形成されるわけです。スコラ・コンサルトはもともと「働きがいと企業の業績の双方を実現する」ことを目指してきましたが、ダーザインブランディングはそれをより強力に推進できることが確認できました。
古村:僕らがコアにお手伝いするのは、おおよそ6カ月程度。規模にもよりますが、早ければ3カ月程度でブランドの構築ができます。でも、ブランディングというくらいで、取り組み続けなければブランドの価値は保てません。常に問い直し、組織内で体現していく必要がありますが、そのための考え方や取り組み方を最初の6カ月でお伝えできます。
辰巳:社員、会社、社会のいずれも豊かになるループを回し続けないと、閉塞感が生じてしまいます。そうならないためにも、正々堂々とど真ん中で、正しいことに正しく取り組むべきです。ダーザインブランディングは、そのための軸を見出だせるサービスです。末永く続く会社をつくりたい人は、ぜひご相談ください。